不妊治療・がん生殖医療

不妊症検査

不妊症の原因は男性:女性=1:1です。
初診時からカップルでの受診を強く推奨します。

一般的な健康状態の確認

身長、体重、血圧測定、血液検査(貧血、肝機能、腎機能、血糖値、甲状腺)を行います。
検査結果次第では、他科の専門の先生や産科の先生などと連携を取りながら、治療の準備を進める必要があります。

妊娠することが目標ではありますが、ゴールではありません。順調な妊娠生活、出産を迎えることができるように、当院では妊娠前からの生活や健康指導(プレコンセプションケア)を指導します。

ホルモン検査

妊娠・出産には種々のホルモン(卵巣ホルモン、視床下部-下垂体ホルモンなど)が必須です。適切な時期に、適切な量が分泌されているかを確認し、子宮・卵巣の機能を評価します。

風疹抗体検査

妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染することにより、感染が胎児に及び、先天異常を含む、様々な症状を呈する先天性風疹症候群(CRS:congenital rubella syndrome)が生じます。
抗体価が低い方は、風疹ワクチンの接種を推奨します。ただし風疹ワクチン接種後は2か月間の避妊が必要となります。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)

卵子は精子とは異なり、今後新しく作られていくものはありません。AMHは、卵巣内の卵子の在庫数を評価します。

治療方針決定の際、AMHも参考にします。ただしAMHが低い=妊娠できない、というわけではありません。AMHはあくまで卵子の数の指標であり、質の指標ではありません。また反対に、AMHが高い=妊娠しやすい、というわけでもありません。

AMH値の解釈には正しい知識が必要です。詳細は診察時にご説明させていただきます。

卵管疎通性検査(卵管通水検査、子宮卵管造影検査)

排卵した卵子は卵管に取り込まれます。一方、腟で射精された精子、また人工授精で子宮内に注入された精子は、卵管を通じて、卵管内で卵子と出会います。出会った卵子と精子は受精卵となり、細胞分裂を繰り返しながら卵管を通じて子宮内に着床します。

上記の通り一般不妊治療(タイミング法や人工授精)においては、卵管が通っているかを調べることが重要です。患者様に応じて、適切な検査法を選択します(子宮卵管造影検査の際は他院へご紹介させていただきます)。

子宮鏡検査

子宮鏡と呼ばれる細い内視鏡を使い、子宮内の観察を行います(子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫、子宮内癒着、子宮形態異常など)。病変が確認された場合は、外来で処置、または他院へご紹介させていただく場合があります。

精液検査

不妊カップルの約半数において、男性に原因があります。
精液検査は今後の治療の方向性を決定する大切な検査ですので、早期に受けられることを強く推奨します。

どうしても精液検査に抵抗があると仰られる方には、自宅でスマートフォンを使った精液検査についての情報提供をさせていただきます。

当院のスタッフが、精液量、精子濃度、運動率、正常形態精子率、白血球の有無などを検査します。精液所見が極めて不良である場合は、血液検査(ホルモン値、染色体検査)や他院への紹介を行います。

一般不妊治療(タイミング法、人工授精)

多くの患者様は、できるだけ負担の少ないこの一般治療から開始となります。

一般不妊治療に必須な3要件

  • 排卵がある
  • 卵管が通っている
  • 精子の状態がよい

タイミング法

排卵日を予測し、性交渉のタイミングを指導します。排卵日の予測には、経腟超音波検査(経腟エコー)やホルモン測定などを用います。
大切なことは、妊娠率が最も上昇するのは、排卵日に性交渉を持つ時ではなく、排卵日の前々日と前日に性交渉を持つ時です。1回あたりの妊娠率は約3-4%です。
状況にもよりますが、タイミング法を行っても妊娠に至らない場合はステップアップ(人工授精や高度生殖医療)を考慮します。

人工授精

タイミング法で妊娠に至らない方、精液所見が不良な方、性交渉がうまく持てない方などが適応となります。調整(洗浄と濃縮)した精液を、排卵に合わせて子宮内に注入する方法です。1回あたりの妊娠率は約9-10%です。
こちらも状況にもよりますが、3回から6回人工授精を行っても妊娠に至らない場合はステップアップ(高度生殖医療)を考慮します。

排卵誘発剤

種々の原因により、排卵が起こらない、排卵が起こりにくい方がおられます。一般不妊治療においては排卵は必須要件の1つです。このため排卵誘発剤(内服薬、注射薬)を用いて、卵胞発育や排卵を助ける場合があります。

高度生殖医療(一般体外受精、顕微授精)

一般不妊治療を何度も行ったが妊娠しない方、卵管が閉塞している方、精子所見がよくない方などが適応になります。

一般体外受精(cIVF:conventional IVF)

採卵により未受精卵を体外に取り出し、精子と共存させる(媒精)ことにより得られた受精卵を数日間培養し、発育した受精卵を患者様の子宮内へ戻します。子宮内に胚を戻すことを胚移植といいます。

顕微授精(ICSI:Intracytoplasmic sperm injection)

何らかの理由で一般体外受精では受精が起こらない場合、重度の精子所見不良を認める方などが適応となります。卵子の中に細い針を用いて、精子を1匹だけ人工的に入れ、受精卵を得る方法です。こちらの場合も一般体外受精の時と同様、得られた受精卵を数日間培養し、胚移植を行います。

調節卵巣刺激法

一度に多くの卵子を採卵することが、妊娠率の増加につながります(沢山卵子が取れると質が悪くなるというわけではありません)。そのためには採卵に至るまでに沢山の卵胞・卵子を育てる必要があり、多くの場合、排卵誘発剤(内服薬、注射薬)を用います。
一方で、卵胞・卵子を育てるばかりでは排卵してしまい採卵できなくなるという事態になり得ます。そのため排卵を抑える薬剤(内服薬、注射薬、点鼻薬)を併用する場合があります。

一般的にロング法やショート法、アンタゴニスト法などの呼称がありますが、これはあくまで排卵を抑える薬剤の種類や使い方を示しているものであり、実際の治療では排卵誘発剤の種類や用量が、多くの良好な卵子を獲得するにあたって重要となります。

患者様によっては調節卵巣刺激法を選択したいと思っても、その方の卵巣の状態から選択できない、避けた方が望ましいなど様々な場合があります。患者様にとって最も適切な卵子獲得方法を治療ごとに考えていきます。

胚凍結・融解胚移植

採卵時に複数の卵子が獲得でき、複数の受精卵が得られた場合は凍結保存を行います(胚凍結)。初回の移植で妊娠に至らなかった場合、次回の治療はこの凍結胚を融解し、移植を行います(融解胚移植)。つまり採卵からの再スタートではありません。また2人目、3人目ご希望の方の場合も、同様に凍結胚を融解し移植を行います。
その他、採卵時に卵巣過剰刺激症候群を発症しており、その重症化を避けるため、採卵周期での移植を取りやめ胚凍結を行う場合もあります。

卵管鏡下卵管形成術(FT:Falloposcopic Tuboplasty)

一般不妊治療では、卵管が通っていることが必須です。

一般不妊治療に必須な3要件の1つに、「卵管が通っている」があることを不妊症検査ならびに一般不妊治療の項目でお伝えしました。以前は卵管が通っていなければ高度生殖医療へのステップアップを余儀なくされていましたが、この卵管鏡下卵管形成術を行うことで卵管通過性が回復し、一般不妊治療で妊娠する可能性が出てきます。

治療成績は治療を受けられた施設や年齢、閉塞の程度(両側卵管閉塞か片側卵管閉塞)によって異なりますが、約24%の方がFT後に一般不妊治療で妊娠したというデータがあります。また妊娠した方の80%以上の方がFT後半年以内での妊娠成立との報告があり、FT後半年間妊娠に至らない場合は高度生殖医療へのステップアップなどを考慮します。

実際の治療の詳細については診察時に説明しますが、TERUMO(テルモ)のホームページも参照ください。

不育症・着床障害検査

血液検査

抗リン脂質抗体などを含む自己抗体の有無、自己免疫、凝固線溶系、内分泌、血糖などの異常を調べます。異常を認めた場合、内服薬や注射薬で治療を行う場合があります。
注意すべきこととして、これらの検査の異常は不育症や着床不全のリスク因子とはなりますが、原因ではありません。したがって治療を行えば必ず妊娠・出産に至る、というわけではありません。また逆に治療を行わなくても妊娠・出産に至る場合もあります。
検査での異常値の解釈、ならびにその治療については正しい知識が必要です。適切な説明・指導を診療時に行います。

子宮鏡検査

子宮鏡と呼ばれる細い内視鏡を使い、子宮内の観察を行います。子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫、子宮内癒着、子宮形態異常などは、不育症または着床障害の原因となり得ます。病変が確認された場合は、外来で処置、または他院へご紹介させていただく場合があります。

染色体検査

カップルの一方、または双方の染色体の異常が、不育症や着床障害の原因となり得る場合があります。

子宮内膜着床能検査(ERA:Endometrial Receptivity Analysis)

子宮内膜には胚を受け入れる最適な時期があり、胚移植の際はこの時期に合わせて行うことが重要です。この最適な時期は個人差があり、この時期を調べる検査がERA検査です。異常を認めた際は、最適な時期に移植を行うよう、薬剤の調整を行います。

詳しくはこちら(igenomixのホームページ)を参照してください。

子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA:Endometrial Microbiome Metagenomics Analysis)

以前は子宮内膜は無菌と考えられていましたが、実は無菌ではなく、細菌叢(マイクロバイオーム)を形成していることがわかりました。この細菌叢の乱れは、胚の着床不全、また流産と関わっているとの報告があります。異常を認めた際は、抗生剤の内服薬や、乳酸菌製剤(内服薬や腟剤など)を用いて治療を行います。

詳しくはこちら(igenomixのホームページ)を参照してください。

慢性子宮内膜炎検査(BCE:Biopsy Chronic Endmetoritis)

慢性子宮内膜炎は、持続する子宮内の炎症であり、通常は無症状です。不育症や着床不全、とりわけ後者と関連があることが報告されています。異常を認めた際は抗生剤の治療を行い、改善を認めたことを確認してから胚移植を行います。

がん生殖医療・妊孕性温存

がん生殖医療・妊孕性温存とは

近年、がん治療が飛躍的に進歩したため、病気を克服した患者さんが増えつつあることから、そのような患者さんの治療後の生活の質(QOL=quality of life)という問題にも目が向けられるようになってきました。
若い患者さんに対するがん治療の代表的な副作用として、卵巣や精巣などの性腺機能不全、子宮、卵巣、精巣など生殖臓器の喪失により将来子供を持つ事が困難になる事(妊孕性の廃絶)があり、ホルモンバランスの異常や不妊症の原因となる可能性があります。
がん生殖医療では妊孕性温存を目的とし、がん治療前に精子や卵子または胚(受精卵)を凍結保存することで、がん治療終了後、将来お子様を持てる可能性を残すことができます。

このような状況下でご相談希望の患者様、精子や卵子・胚凍結をご希望の患者様、まずは当院にまでご連絡下さい。迅速に対応させていただきます。

  • 卵巣凍結は現在当院では対応できませんが、情報提供や対応可能施設への紹介などは対応させていただきます。こちらに関してもまずは当院にまでご連絡下さい。